伊能忠敬、間宮林蔵、松尾芭蕉に囁かれる隠密説について。
映画「天地明察」をご覧になられたでしょうか？
新しい暦を作成した安井算哲の話です。映画では、十数人もの人で諸国を回り、星などを測定していきます。
伊能忠敬、間宮林蔵らも、幕命で諸国を回った。彼らを隠密というなら、一行全員が隠密でないと不自然になります。
松尾芭蕉の場合は、弟子がついて回ります。弟子全てが隠密になってしまいます。
諸国を無警戒に出入りできる、その行動に情報収集活動を重ねたように想えます。
彼らが単独で行動できない限り、隠密説は眉唾に思えてなりません。
諸国をさすらうこと自体が不自然でない個人、集団で動いても単独行もある、薬売りなんかの方がむしろ隠密には似合っています。

「暴れん坊将軍」では、男のお庭番、女のお庭番が出て、市井人
徳田新之助が悪を成敗する時、上さまに代って「成敗！」の上さまの声により、二人が悪を成敗するシーンが多かった。
天下泰平の世ともなると、公儀隠密は最早、上さまのSPになったのだろうか？
そうではあるまい。
飴屋の虎さんみたいに、幕末でさえ公儀隠密は存在し得た。
それは「査察」みたいに各地の藩にネットを張り巡らし、ヒットした藩を更に詳しく調べていったのだと思う。
そんな中で、特に秀でた者が上さまのお庭番として身近に控えたのだと思う。京にあっては新選組と連動し、江戸府内にあってはテロを繰り返す薩長の輩を人知れず葬り去っていたのだろう。

太田蜀山人は漢学、漢詩、和歌に秀で、当時の一流人との交流が盛んだった。仕事に恵まれなかったのは、下級武士からではなく、田沼政治が粛清された後、田沼に連なる人との交流が深かったことが仇になり、浮かび上がれなかったようです。
遠山景普は煙たかったのか、遠方地をたらい回しに遭っています。

太田蜀山人と景普（金さんのお父さん）は、時代は多少被ってはいても交流などはあっても少なく、なかったくらいだったと思います。
理由は、蝦夷の統治に深く貢献し、ロシアのラスクマンとの交渉でも国際法に鑑みた交渉手腕が評価されています。
そうした世評により、１８１２年〜１８１６年長崎奉行に就任しています。阿蘭陀人との間に生まれた混血児の問題など、多難な中で殊に失点鳴く務めています。
こういう江戸以外の在任が長く、蜀山人は文化人との交流が多かったため、接点はあっても少ないと思います。
長崎奉行と言えば、柴田錬三郎描く「長崎犯科帳」、ＴＶでは萬屋錦之助が務め、昼は昼行燈、夜は必殺仕掛人みたいに悪をぶったぎる内容でした。この時、日野正平演ずる手下が一癖あった。
景普も大過なく過ごした影に、平松忠四郎みたいな影では悪人成敗していたと捉えると、配下に飴屋の虎さんみたいな隠密の存在を思い浮かべます。

伯耆の国で尼子氏と戦ったk和山城主・杉原盛重（忍者が出自で城主までのしあがった）がいる。山中鹿之助の悲願、尼子氏の再興の夢を彼は打ち砕いたのである。
その陰に、佐田彦四郎、神五郎、小鼠の佐田兄弟、住岡久兵衛、別所雅樂允らの名前が伝わる。
姓があることから、土豪などではないだろうか？
術、その他は伝わっていないが、戦国時代のその当時、「乱歩（らっぱ）」などと言われ、情報、調略を専らにしていたのではないだろうか。また、姓のあり、土豪かと思える点から、刀剣の使い手でなかったか、と想わせる。

遠山の金さんの中に元忍者がいます。
飴屋の虎さん、こと公儀隠密を抜けようとして追われた、若杉段平。登場回では、戦い逃れた先がお光のお店。そのお店の机に張り子のトラ。名前を聞かれて「虎、虎って呼んでくれ」と。
時代は、黒船が来航する十年ほど前、１８４０年代で天保の改革が破綻した後。
そんな時代にあって、公儀隠密は何を目的に行動し、段平はなぜ抜けようとしたのか？
そんな段平を金四郎は老中に願い出て、自身の子飼いの密偵として重宝するようになる。
子ども心に思ったのは、「忍者に苗字がある？」ということでした。
黄門さまの、風車の矢七、お銀の時代から２００年ほどは経っているこの時代。
金四郎の父は、根室でロシアのラスクマンと交渉をしている。
外国からの渡来が目に見えて増えて来た、そんな時代である。

スポ根ものドラマの出て来る前、少年時代劇みたいな夢のような時間があった。
太田博之の「怪傑　鷹の羽根」は、再放送で福井放送でやっていた。＜日本海の民放は日本テレビ系の１局、これにNHKとNHK教育＞
可愛らしさで少女の胸を熱くしていた太田博之。
凛々しかった「新吾十番勝負」の田村正和。
「隠密剣士」の大瀬康一は少し年上って感じやった。

だが、わけても少年の心を鷲掴みにしたのは、沢村精四郎＜後の澤村藤重十郎＞の「紅孔雀」、武田勝頼の遺児、伊那丸を中心に展開される「神州天馬峡」であった。後年、旗本退屈男の末期、「謎の竜神岬」で元気な姿にほっとさせられた。

市川雷蔵の「忍びの者」も結構、見ていた。

忍者フッズと言えば、マキビシのプラスチックもあったかと思います。

こういう流れの延長に「赤影」は位置していたのだと思います。撮影は京都と亀岡を結ぶ林道でした。

影丸は人気もあったが、忍者ごっご、忍者遊びは、意外と多くない。
小学校の低学年の頃、講堂に集められ「忍者ごっこ＜忍者部隊・月光ごっこ＞は危険だから止めるよに」という校長先生の言葉の終わらない内に、ドスンという大きな音。
その行動から自転車置き場の屋根に飛び移って、衝撃で穴を開けた天井から落ちた上級生・・・・。
かように「忍者部隊・月光ごっこ」は、一世を風靡していた。
中でも敵役の美女＜バナナ・ボートのお姉さま、浜村美枝＞に悩殺される、初心な少年たちでした。

ゼロ戦はやとで、明治キンケイカレーも人気が高かった。宇宙―ス、スーパー・ジェッター、などSFものもよく読まれていた。
キングの「ケネディ騎士団（ナイツ）」は発想に惹かれた。
スポ根ものが出る前、夢とロマンに溢れていたように思う。

幼少の頃、様々な行商人が家の前を通り、母が勢いよく玄関を出て「〜さん」と呼び止めて買ったものである。豆腐、わらび餅、金魚、さお竹、魚（敦賀だったので）、八百屋、などを思い出す。司馬遼太郎の随筆によれば、東京でも江戸湾で獲れた蟹なんかが籠に入れられて売っていたという。シジミやアサリと共に。
江戸時代なら、更に職人が多かったから、行商は多種多様。お化粧品、包丁研ぎ＜これは稀に来た＞、薬＜富山から半年毎に来ていた＞、総菜など。
こう考えると、岩石入道は飴屋、モロに行商。
行商は情報の集積されるところ。
忍者が紛れてもおかしくはないか。
昨今は、ラーメンの屋台、焼き芋の屋台、おでんの屋台も見かけなくなった・・・。

東京都台東区内でビル工事のため、土壌調査をしたところ、土から砒素が検出されたことがある。その場所は工場などの跡地ではなく、大名屋敷の跡地だったとか。もしかしたらそこの大名家でなんらかのお家騒動でもあったのでは、と噂されたことがあった。もっとも藩主や奥方を狙ったのではなく、家臣同市の諍い、腰元、女中などのいざこざで用いられたのかもしれない。
捕り物の時代劇では毒殺事件で「石見銀山猫いらず」というのも登場する。これも主成分は砒素だが、もしかして、大名屋敷で、ネズミの駆除をやってただけなのかもしれない。

九鬼はこの時の恩を忘れず、江戸無血開城を陰で支えることとなった。薩長軍を相模路において、艦砲射撃で粉砕、撃滅せんとする意志のあることを海舟がちらつかせ、好戦論を吐く薩長をまとめ西郷が無血開城を飲むより仕方なくさせた。
良尚は帰途、尾張に立ち寄りうんとお灸を据えた。

影丸らは土蜘蛛五人と対峙でき、倒すことができた。

幻之丞、杢兵衛、天真は、夜鷹を駆使して夜の江戸の治安に更に務めた。

智恵伊豆は１６６２年に没するが、振袖火事事件が公的に大きな最後の事件となった。

八瀬童子らは、赤影、白影を遺して、一足先に京都に向かった。宮中の安寧を取り戻すためだった。振袖火事に乗ずる向きもあったからで、彼らはいずれも病死とされた。

H・Kさん
何か期待します。
宜しくお願いします。

生き残った甲賀者を他所に、「待てぃ」の大声で襖がサッと開かれた。すると、最新式で火縄の要らない鉄砲が十丁八瀬童子を目がけ、狙いが定められた。
「ハハハ」、「撃つなら撃ってみよ」という声とともに幻之丞が懐からなにやら取り出し、「お主らの玉は全部抜いておいた」「ソレッ」というかけ声で杢兵衛、天真らが懐から玉を取り出し、ねずみ花火に投げつけた。
ねずみ花火は爆発しながらもシュルシュル音を立て、中屋敷に飛来していった。あちこちで火災が起き、鉄心が不覚にも落とした火薬に飛び火し、中屋敷は業火に包まれた。
この惨劇を合図に、赤影らは甲賀の三人をやすやすと葬った。京太の催眠術は一対一でのみ効力を発揮する。乱戦では用をなさなかった。
逃げようとした阿久根左衛門は切り倒された。
九鬼は良尚から使い道の点から逃がすように言われていたので、そうした。
稲葉盛俊の家臣が健気にも向かってくるのを赤影は言った。「お主らの命に用はない。稲葉盛俊にのみ用がある。皆、手を引け」と叫んだ。
こうして稲葉盛俊一人が捕縛され、伊豆のもとに差し出された。
「病死ということで処理をする。尾張には塁は及ばない。安心して腹を召されよ」

こうして公儀の忍びによる放火説は消え、振袖火事は今日にまで名を遺すこととなった。
尾張藩にお咎めはなく、放火犯の甲賀者には伊賀者並みの保証がなされるようになった。
江戸は防災、防火都市tとして新しく生まれ変わることとなった。
薩摩藩にも豪商がしたこと、ということで藩自体にお咎めはなかった。ただ、薩摩に逃れた影の一族の者と婚姻は禁じられ、子孫を残す道を途絶えさすことで本家は安堵させられた。

江戸市中を見舞った大火は、幕府の息のかかった瓦版屋「よみうり」の命名した「振袖火事」で瞬く間に認知されていった。だが、尾張藩は少し遅れて、息のかかった瓦版屋「万（よろず）のふみ」で「大火は幕府隠密の放火」というセンセーショナルな見出しで、どちらも飛ぶように売れ、どちらも認知されるようになっていった。幕府が甲賀者で良尚により、翻意せず尾張に逃げ込んだ者を抹殺し、陰謀加担者を一掃しない限り、噂にせよ幕府の威信は失墜したままとなる。ところが、彼らを一掃せんものと動き出した矢先、土蜘蛛五人の出現で影丸らは動けなくなった。
それで、良尚は半蔵の意を汲んで、八瀬童子らに当たらせることとなった。この動きは尾張にとって寝耳に水となった。
彼らは尾張藩中屋敷におり、甲賀の五人もそこにいると言う。
新月の夜をまって、八瀬童子は動き出した。
堀に潜む鮎彦には、猛毒を垂らし、苦しみ水上に躍り出た所に手裏剣の雨が降り注がれ、絶命した。
樹上で見張る多羅尾は、既に黒い大凧に乗った白影による正確な小柄攻撃で絶命していた。ただし、樹上からは落下しないよう縄で移動した白影が配置を工夫していた。
美福の地獄耳は、なんらかの異変が二人に起きたことを仲間にも伝えた。三人は庭に出て迫り来る敵を注視し、身構えた。
いざ、という時は庭の木々には鉄心の仕掛けた火薬があり、それへ火矢を見舞えば轟音とともに大爆発する手はずになっていた。京太は敵の姿が見えたら術をかけようと手ぐすねひいて待っていた。
と、無数の花火がシュルシュルと音を立て、庭をネズミのように火を噴きながら回りだした。八瀬童子らの仕業である。地獄耳の美福の耳は却って悩が乱され、耐えがたい頭痛を引き起こした。

尾張藩蔵屋敷は尾張藩の陰謀逸らしで放火することが決まっていた。土蜘蛛党でやるはずだったので、下忍十人が向かった・彼らは密命を帯びていた。蔵屋敷に密かに運び込んでいた南蛮貿易で儲けた品々を中屋敷に移すというものだった。
だが、土蜘蛛の下忍が踏み込むと、むぬけの空だった。キョトンとする彼らに「あっハッは」という笑い声が響いた。いぶかる彼らの前に、十六夜幻之丞、杢兵衛、日輪天真が現れた。「それらは智恵伊豆殿の許に運んである」と言った。
すると、土蜘蛛党は後方に退いて、松の枝い飛び移った。七部でお馴染みの樹上からの攻撃だ。「フフフ」とは三人。「？？」の土蜘蛛党。
更に樹上攻撃をせんと身構えると、次々に落下していくでｈないか。「影丸からお前らの業を聞いて、松の枝に切れ込みを入れておいた。くらうがよい」と三人は雨あられと手裏剣を見舞った。全員絶命した。
それを合図に三人は放火した。
記録では、振袖火事を免れたが、後に謎の失火で焼亡したとある。
幻之丞の出ていた小屋は流行病でつぶれ、振袖火事で演劇界自体が大打撃を被っていた。
幻之丞は、夜鷹を一手に陰で束ねることとなり、夜は彼女らの目をかいくぐって行動することは不可能だった。だから、今夜のことは事前に察知出来ていた。半蔵も幻之丞の働きの応援として、杢兵衛、天真をつけることにしていたのである。
八部で金目にあわやの影丸が虎口を脱した影には、夜鷹と幻之丞の連携があった。
甲賀五人は、水が得意の鮎彦、樹上が得意の多羅尾、催眠術の京太、火薬の鉄心、地獄耳の美福、頭領格が美福だった。
振袖火事の成功から、復興に莫大な杉材の需要が見込まれ、この搬送の警護を兼ねて甲賀五人は動いていた。八瀬童子は、彼らを急襲し、事の次第を闇に封じることで天下の平和を実現せんと向かった。

ここは尾張藩中屋敷（今の上智大）、上屋敷（今の市谷自衛隊、かつての陸軍省）と違い、江戸家老の私邸的な雰囲気があった。１６５６年夏、一人の男が稲葉盛俊は勘助（土蜘蛛党）の報告に衝撃を受けた。
江戸市中に放火することを依頼していた土蜘蛛党が小頭と若干の下忍を除いて全滅した！
手はずでは、１６５６年秋に放火し、来る冬の寒さをしのぐのに木材の需要は不可欠だった。そこで、薩摩藩の豪商、阿久根左衛門の意を受け、屋久島から杉を五十本、大きいので普通の杉なら三百本に相当しようか？運ぶ船は戦国時代最強のの水軍、九鬼の末裔、九鬼多門之助率いる大型船十数艘、屋久杉は新たな埋め立て地に運ぶというもの。
影丸は秋月藩に向かっていて不在、そこを土蜘蛛党が放火し回るというものであった。
その肝心の土蜘蛛党が・・・・・。
勘助は言った。「伊賀に比べて甲賀は冷遇され恨む者も多うござろう。彼らに任せては？」と勘助。
勘助の手引きで甲賀の頭領、柘植甚内は招かれ、稲葉盛俊の依頼を引き受けることになった。甚内は勘助に頼んだ。「お主ら小頭で半蔵屋敷を急襲され、影丸を動けぬようにしてはくれまいか？」
「おお、われらにとっても復讐できる良い機会となる。よかろう、土蜘蛛五人、命を賭して影丸を釘付けにしよう」
こうして甲賀者が放火に務めている間、土蜘蛛五人は半蔵屋敷を急襲し、挑戦状を突きつけ、釘付けに成功した。
良尚は八瀬童子らからの報告で江戸への下向を決意し、甲賀者に翻意を迫り、二十数人は翻意した。
だが、腕に覚えのある五人は良尚に随わず、盛俊らと図って幕府を転覆せんと仲間二十数人と袂を分かった。
本来、秋の放火が正月に変わり、埋め立て地の木材がすぐに役立つこととなり、阿久根左衛門は九鬼多門之助に払った千両を回収して余りある儲けとなった。
甲賀五人、稲葉盛俊、阿久根左衛門、九鬼多門之助の内、九鬼以外を生かしておくと天下の騒乱となりかねない。
それで甲賀五人忍と赤影らの闘争が始まったのである。

三回目の良尚の下向は、本来の予定にはなかった。
１６５７年の秋に行われ、この時は日光参内はされなかった。

急な下向となったのは、この年の１月１８日〜２０日にかけてあった、「振袖火事（明暦の大火）」があり、天守閣は炎上し以後再建されることはなかった。江戸市中は大半が燃えたと誇張なしで伝えられている。

様々な説の中で、江戸の都市計画を円滑に進める幕府の陰謀説を採りたい。伊賀者に比べて冷遇されていた甲賀者が手分けし、江戸市中のあちこちに放火したとしたい。
火消の態勢、与力、同心との連携など整理されていなかった当時、折からの風もあって世界三大火事（ローマの大火、１６６６年のロンドンの大火）の一つとも称される。

だがこの甲賀者を唆した尾張藩の家老はトボけ、闇の報奨金は支払われなかった。これをあろうことか、半蔵におそれながらと訴え、この収集に良尚は下向することになった。
赤影は半蔵の配下と協力して、甲賀者の慰撫に務め、尾張藩主に予め断り、計画を立てた家老、稲葉盛俊を暗殺＜病死＞することに成功した。
甲賀者には尾張藩から約定通りの報奨金が支払われた。

だが、彼等にも考えが及ばないことがあった。
稲葉盛俊は薩摩藩に急進し、江戸の復興にと１６４０年から始まった、年貢としての屋久杉を江戸の復興に当てることとしたのである。江戸市中は豊富な屋久杉の提供で復興が早くなった。これらは年貢ではなかったので、幕府から薩摩に支払われ、仲介料を尾張藩がせしめるという構図だった。

この秘中の秘を口外されては、幕府の権威は失墜する。
稲葉盛俊のごく内輪の知る者を数人、闇に葬る必要があった。だが、かれらを生かして幕府の転覆を図る、尾張藩。中でも甲賀者の火つけ人は大事な生き証人。

こうして不毛の戦いが幕を切って落とされることとなった。

赤影は、家康の伊賀越えの際、半蔵に出会い「厭離穢土」「欣求浄土」の下、天下の平和を希求する半蔵との出会いから秀吉から心が映り、信長亡き後、織田を乗っ取る野望丸出しに柴田勝家を滅ぼした秀吉から完全に袂を分かった。だが、残った飛騨の者は引き続き秀吉につき、関が原、大阪城と豊臣恩顧として仕えていく。その過程で出来た縁で、薩摩に秀頼（替え玉）を戴いて落ちていく。幕府からの琉球の朝貢への介入の阻止で、飛騨の者をニセ影の一族として召し抱えるようになっていった。先に落ちた者、影法師の影一族がこのまま飛騨に残すことを危険に感じた赤影は半蔵と一芝居を打ち、全員飛騨から薩摩に落ちさせた。暗殺帳云々ではなく、無用の殺生を避けた。これには、良尚の意志も働いていた。
飛騨の者が落ちていっても、女は皆無に近かったので、早晩飛騨の者は絶えることは目に見えていた。
八瀬童子として暮らす赤影らにとって、故郷飛騨はポッカリ空いた真空地帯、折からの凶作続きから、冷涼な戸隠の里から新たに移り住む者は多く、彼らが後年飛騨忍者とされた。元の戸隠にも忍者はいるが、どちらかと言えば修験道によった。いずれにせよ、山を挟んで飛騨と戸隠は位置しており、それまでにも交流はあったので、自然な流れであった。
暗殺帳自体秘匿の事柄、殺生をせずに済むのならの思いの、良尚の思いを、半蔵、偃月斎、赤影三者が共有、共感しての結果となった。
赤影も半蔵も、伊賀越えから三代目、孫となっていた。

竹内まりあの母校大社が報徳学園に勝った！ことを祝し、書いておきますネ。
赤影は違和感を訴え、半蔵はそれを承け止めたという設定です。
二回目の下向は、正雪の乱が収まった１６５１年になるはずですが、１６５４年の秋まで延期されました。これは、正雪の東海道行を密かに阻止し、更に５部の冒頭で影丸が上方に行き、正雪の意志を汲む連中の暗躍を阻止し、ようやく天下が収まるのをまったからでした。
現実には、寒月斎の野望を打ち砕き、残りの者の東上を防いでからとなりました。
天台座主良尚の下向は、それらが片付いてから行われた。
それの三月前のこと。
寒月斎からの第二陣を要請する知らせが偃月斎の許に届いた。早速、残っている飛騨者の中から数人選抜しようとする時、偃月斎は気配を感じ、手を止めた。
「偃月斎、久しいのう」「アッ、お前は赤影！」刀を抜こうとする偃月斎を手で制し、「聞け、お主らをどうこうするつもりはない。今頃、寒月斎らは倒されていることと思う」「そんなバカな、黒夜叉、卍丸、大文字冬心、独眼房兵馬、不知火典膳と選りすぐりを向けたぞ、お主も彼らを知ってい様」「いかにも存じている。じゃが、伊賀の影丸の強さは影法師らを倒したことで知れよう。ワシも勝てるかどうかじゃ」「なにッ！・・・・、ムムム・・・」「ワシはお主らをどうこうするつもりはない。先に薩摩に下った者と合流し、影の一族として暮らしてはどうか？」「・・・・、それではお主らが・・・」「ワシらは八瀬童子として子孫も暮らしていける。お主らも薩摩で影の一族として暮らせ」「見逃してくれるのか？」「無駄な犠牲を生み出したくはない、さぁ急げ」二人のやりとりは飛騨者に聞かれていた。
赤影を彼らは囲んだ。「否と言ったら？」と間合いを詰めた。
の声の終わる前に、百舌鳥の福蔵が切りかかって来た。飛騨随一の使い手。赤影は、額の仮面の瑪瑙のボタンに触れた。電光が一閃、福蔵は黒焦げになって転がった。囲みは求心力を失った。「さ、一人でも多くここを去れ。もう一時もせぬ内に、鉄砲１００丁を抱えた幕府の追手が来る前に。一刻の猶予もならん」とよばった。
梟の万次、耳の良さでは飛騨随一が言った。「１００人以上の人の足音がする、鉄砲の触れる音も聞こえる」「いかにも、さ早く、堺の豪商・由良道人（ゆらのどうじん）を訪ねて行かれよ。薩摩までの安全は保障してくれる、さ、速く」

書きかけ数行後に再起動してください・・・・・、消えてしまいました。
１６４９年は家光がまだ存命だった。家光は、日光東照宮へ参詣する家綱の後見を真摯な眼差しで有無を言わさず懇願した。良尚は了承した。
家綱は半蔵の配下がお護りし、良尚のお護りは赤影以下が担うことになった。半蔵は残り、江戸を護ることにした。
この途次、赤影は若葉城に不穏な動きを微かに感じ、半蔵に知らせた。他の者は誰一人気づかなかった。
この中に影丸はまだいない。
赤影が不審に思ったのは、家綱公への沿道の人々の歓待ぶりが妙によそよそしかったことである。城主、若葉右近に至っては体調不良を理由に代理を立てた。その代理、阿魔野邪鬼。そつなく処されたが、微かな違和感を赤影は覚え、半蔵に知らせたのだった。
日光の往復は大過なく過ぎた。帰途には、若葉右近から先の非礼の詫びを受けることになった。
良尚に断り、江戸に着くや、赤影は半蔵と対面し、「わしの取り越し苦労ならば良いが、雰囲気が怪しかった」「お主もそう思うか？わしもそう思って、隠密をこの一年に五度、十数人送ったが一人として帰って来る者はいない」「黒影、銀影が仕入れて来た話では、大工が周辺から集められているが、もう一年近くも家に帰っていない者もいるとか、なにやら怪しい」「それが恐らく家綱公によそよそしかった理由ではないか」
など、一部の話の概要はこの夜、半蔵、赤影の会話に出ていた。

良尚が江戸に下向した日時は、一般的な資料ではたどれない。のをいいことに脱線します。
１６４６年２３歳で天台座主に納まった。寛永寺や日光・輪王寺が建立され、江戸に天台座主の諸々の権威が遷された、と一般書には書かれている。
江戸への４回の下向、二回の日光詣ではこれらを訪れるためという目的もあったろう。
だが、良尚入道親王という肩書は伊達ではない。
それだけに留まらない。
将軍を下座に置き、自身は上座に納まって謁見されていた。
それは、「公人朝夕人（くにんちょうじゃくにん）」を世襲した吉田家に伝わる、「吉田家仕事帳」（日記風に書かれ、残決甚だしい）にあった。職責は、将軍の尿をとるべく、しびん代わりの竹筒を推し抱くというものである。室町期に生まれ、時の権力者の尿をとった家系でもあり、旗本八万騎に連なるれっきとした旗本である。
卯軍が呼べばすぐに参上できる近くに侍し、時に用心棒然とした役割をももった。かの信長の尿もとったと伝わる。
将軍家の傍には忍びが侍し、良尚の傍には赤影らが侍していた。
良尚がまだ１０歳頃のこと、赤影らは見た。御所の近くの公田に傍若無人にも入り、収穫前の稲を荒そうとする数人の少年、青年に対し「なにをする！」と凛とした声を発し、「われに続け」と、年上であろう少年に稲を荒そうとする少年らに襲いかかるよう真っ先に踊りかかった。３人対５人と不利なはずの良尚らの気迫が上回り、撃退した。
「お見事」と赤影が駆け寄ろうとするのを制し、「無礼者、名を名乗れ、われは親王なるぞ」の威厳ある声に、思わず赤影らは跪いた。「われらは、八瀬童子でござる」「八瀬童子か、仕事大儀である」と鷹揚に構えた。
このことで若干２３歳で天台座主におさまった、と聞いても「さもありなん」と思った。
１６４９年、座主に就いて三年目、将軍への挨拶、寛永寺、輪王寺への挨拶を兼ねた、いわば顔見世であった。
実際には、この年出された「慶安のお触書」についての問答であった。　

赤影は、半蔵にも真田大助にも言っていなかったことがあった。＜大阪の陣まで飛ばして済みません＞
それは、秀頼の影武者である。千姫さえも騙し得たほど瓜二つ。冬の陣の後、秀頼を影武者にすり替えた。だぁれも気づかなかった。それで、ニセ秀頼は真田大助とともに薩摩に落ちていく手はずをニセ影の一族につなぎをとった。彼らは、炎上する大阪城を背に、薩摩に落ちて行った。
一方、本物の秀頼は一子、国松とともに一足早く、大阪城を赤影らに護られて豊後は日出に落ちて行った。
これゆえ、薩摩と日出に秀頼が落ちて行った伝承が残ることとなった。赤影は、若い緑陰（りょくいん）、黄陰（おういん）を遺し、秀頼、国松親子の警護を任せた。影丸がこの地に修行しに来たのは、こういう経緯があったことにしておく。
幸村は、佐助、才蔵らをニセ秀頼の警護に全力を尽くさせた。
家康は秀頼の命は求めていなかったが、秀忠がそれを許さなかったのは「影武者徳川家康」の描くところである。